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大阪地方裁判所 平成6年(ワ)4195号 判決 1997年1月31日

主文

一  被告は、原告佐々木謙藏に対し金一七五二万三一〇五円、原告佐々木孝子に対し金一六五二万三一〇五円及びこれらに対する平成六年二月三日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

理由

一  請求原因1は当事者間に争いがない。

二  請求原因2について

前記争いのない事実、《証拠略》によれば、次の事実が認められる。

1  交通事故の発生

正人(昭和五一年九月二〇日生)は、平成六年一月一九日午後九時五五分ころ、アルバイト先から帰宅するため自動二輪車を運転中、大阪府豊中市桜の町六丁目九番先路上において、停車していた普通貨物自動車に接触して転倒し、顔面、頭部を含む全身を強打した。

2  正人は、同日午後一〇時二一分ころ、救急指定を受けている被告病院に救急車で搬送された。搬入時の正人の受傷状態は、頭部外傷[2]型、顔面打撲挫創、左前腕・左膝部打撲擦過傷、背部打撲及び全身打撲であり、意識はほぼ清明であった。

被告病院当直医は、X線検査及びCT検査により脳損傷及び全身の骨折の有無を確認した後、顔面挫創につき鼻下縫合等の応急措置を取った上、同日午後一一時ころ、正人に対し経過観察のための入院を指示した。

3  正人は、左上顎洞内出血のため鼻出血が続いており、また、座って上腹部を押さえながら腹部痛及び口渇を訴えた。苦しそうにしている正人を見て、原告孝子は、翌日午前一時四〇分ころナースコールをし、看護婦から水分摂取を受けた。正人は、その後も、腹部痛、呼吸促迫、口渇及び嘔気を訴え、息苦しさのためベッドの上でも仰臥位になることができなかった。同日午前三時及び午前七時ころ、当直医が、正人を診察し、胸部及び腹部のX線写真を撮影した。また、褐色尿が排出され、尿検査の結果は、潜血ツープラスであった。同日午前七時五〇分ころ、正人は、黒茶色の液体を、膿盆に二回に分けて嘔吐した。

4  外科医である康医師及び竹村医師が正人の主治医となり、同日午前九時ころ、康医師が正人を診察した。正人には、貧血及び黄疸は認められないが、腹部圧痛があり、腸雑音が中等度認められた。康医師は、正人が黒茶色の液体を嘔吐していたため、胃内にドレナージを挿入し、さらに腹部超音波検査、CT検査(検乙二の<1>、<2>)及びX線検査を実施した。撮影されたX線写真(検乙一の<2>、<3>)には、肝臓下部と腎上極の間に十二指腸後腹膜破裂による気腫像が描出されており、CT検査画像にも右気腫像に対応する所見があったが、康医師は、右時点に置いて、右X線写真には腹腔内損傷を示す遊離ガス像が認められないとして、腹腔内蔵器損傷の可能性を一応否定し、肝臓下部のガス像については、腸管ガスであると考えた。ただし、尿検査の結果潜血反応がツープラスであり、また超音波検査の結果から後腹膜の右腎肝の間に出血を認めたことから、腎損傷の可能性があり、腸管損傷の可能性も否定しきれないとみて、腹部ドレナージを留置し、正人について絶食絶水を指示した。正人は、嘔吐後、嘔気は治まったものの、腹部圧痛、腹満感を継続して訴え、発熱が続いた。同日午前一一時五〇分の体温は三七度七分、午後二時は三七度四分、同日午後八時には三八度二分に上昇したため、午後九時ボルタレン座薬五〇ミリグラムが挿肛された。

5  同月二一日午前、正人は下腹部痛を訴え、体温は依然三八度であり、C反応性蛋白の値(CRP値)は二五・三、白血球数は六三〇〇であった。竹村医師は、同日午前一一時、正人を診察し、同人は腹痛及び腹満感を訴えており、腹直筋の内側で臍下部から下方に最も圧痛が強く続いており、両側腸骨に中等度の圧痛、胆のう付近に軽度の圧痛、右腎部に軽度の圧痛と腫脹を認めた。竹村医師は、種々の炎症がある場合に上昇するCRP値が高いものの、腹部の触診所見及び正人の訴える腹部圧痛の部位が筋肉の一部分を示していたことから、穿孔性腹膜炎や腹腔内出血を示すものではなく、筋肉痛によるものと判断した。さらに、正人について、胃チューブより胃洗浄したところ、緑色胆汁を含む廃液を中等度認めたが、出血はなかったため、消化管からの出血はないと判断し、胃チューブを抜去し、同月一九日以来の経過観察により異常なしと認め、夕食からお粥の提供を許可した。もっとも、正人の発熱は続き、同日午後四時の体温が三九度一分に上昇したため、正人に対しボルタレン座薬が再度挿肛され、以降二六日まで一日三回、一回一錠のボルタレンが経口投与された。なお、原告孝子は、正人が吐血したことから、内蔵破裂があったのではないかと心配したが、被告担当医らは、原告孝子に対し、打撲であるから大丈夫、嘔吐物は鼻血を嚥下したものである旨の説明をした。

6  同月二二日、正人の体温は三六度八分、CRP値三七・一、白血球数四四〇〇であった。竹村医師は、本人が継続して腹部圧痛を訴えていたため、同日午前一一時五〇分ころ、ボルタレン座薬を挿肛した。また、同日から、正人に対し常食を指示し、朝食にはパン及びバナナ等が、昼食にはお粥及び野菜の煮物等が、夕食にはお粥及び魚の白身等が出されたが、正人は「腹痛のため食べたくない。」と訴え、少ししか摂取することができなかった。

7  同月二三日、正人の体温は三六度二分であった。同日も、正人に対し、米飯及び煮物等の食事が出されたが、やはり少ししか摂取できず、水分補給が主になされた。

8  同月二四日、正人の体温は三七度、CRP値三六・九、白血球数六六〇〇と、CPR値は依然高かった。同日午後二時ころ、正人の体温は三八度七分に急に上昇した。同月二五日、正人の体温は三七度六分、白血球数一万七四〇〇であり、白血球数が急に増加した。白血球数は感染症や炎症、出血がある場合に増加するものであり、康医師は、右白血球数の増加及び発熱が改善しないことを危惧し、腹部立位及び腹部臥位のX線撮影を実施した。右X線写真には、腸腰筋外縁にガス像が描出されており、これは後腹膜穿孔によるガス像であったが、当時、康医師は異常ガス像であるとは考えなかった。そして、正人に対してはその前後を通じ、米飯、おひたし、焼魚等の食事が出されたが、正人は、腹痛のため、これをほとんど摂取することができなかった。

9  同月二六日、正人の体温は三八度七分、白血球数一万九六〇〇と依然改善はみられなかった。そこで、同月二七日、康医師は、正人の発熱は腸管損傷によるものではないかと危惧し、造影剤による胃十二指腸造影を行い、十二指腸破裂によると考えられる造影剤の漏れを確認し、このときはじめて外傷性十二指腸破裂があったことを知った。そこで、康医師及び竹村医師は、緊急開腹術が必要であると判断し、正人に対し絶食絶水を指示したうえ、同日午後二時四五分、十二指腸破裂部縫合閉鎖術を開始し、開腹したところ、腹膜は炎症性に肥大しており、大綱がダグラス窩方面にのびて炎症性に癒着しており、これを剥離して検索すると、肝湾曲部の後腹膜が破れ、同部より膿を含む胃液が多量に流出した。後腹膜を大きく開け、後腹膜腔の十二指腸をみると、後腹膜は小指頭大位の大きさ(約一・五センチメートル)で破裂しており、膿は右側下部後腹膜腔より小骨盤腔を介して、左側下部後腹膜腔までみられた。被告担当医らは、破裂部十二指腸の蒼縁を切除後、二層縫合し、次いで、総胆管よりTチューブを留置し、トライツ靭帯より約二〇センチメートル肛側の空腸より十二指腸破裂部付近まで一〇フレンチのチューブを留置し、空腸瘻とし、両骨盤腔、両小骨盤腔、両側腹部、皮下にそれぞれドレーンを留置し、腹腔内を温生理食塩水で洗浄後、腹壁を順層的に縫合し、手術を終了した。

10  本件手術後、正人は、同月三一日になっても、ドレナージからの膿の流出が続き、体温も三八度前後と改善されなかった。康医師は、原告らに対し、同日再ドレナージの緊急手術を施行する必要があることを申し出たが、原告らは、済生会病院への転院を希望し、同日、正人は同病院に転院した。

11  正人は、同日以降も腹腔ドレーンからの膿汁排泄及び高熱が続き、同年二月三日午前八時三分ころ、播種性血管内凝固症を併発して死亡した。

三  請求原因3は当事者間に争いがない。

四  請求原因4(被告担当医らの過失)について

1  外傷性十二指腸後腹膜破裂について

《証拠略》によれば、次のとおり認められる。

(一)  外傷性十二指腸後腹膜破裂は、十二指腸の遊離腹膜内に面しない後腹膜部分の破裂をいい、十二指腸単独穿孔を含めても合併症の発生率は一〇パーセント、死亡率も一四パーセントから五四パーセントと高く、特に診断の遅れ及びそれによる予後の悪化が高い死亡率の原因となるので、遅くとも二四時間以内の手術が必要であるとされている疾傷である。なお、「直死例を詳細に検討すると、二四ないし四八時間以内の死亡例の死因は、重篤な副損傷によるものが多い。」との報告もみられる。

(二)  外傷性十二指腸後腹膜破裂は、わずかな外力でも生じ、さらに腹膜刺激症状の出現が遷延するため、臨床症状からの診断は困難である。患者は、受傷初期には、上腹部に鈍痛があるのみで、ショック症状を認めないことが多く、時間の経過とともに上腹部痛が増強したり、背部痛が出現してくるが、筋性防御は弱く、急に循環状態が悪化し、ショックに陥るという経過をたどる。

これに対して、十二指腸の遊離腹腔内に面する部分が破裂する腹腔内破裂では、右破裂により腹管内容物が腹腔内に直ちに流出するので、受傷早期から、ショック症状、上腹部の激痛、頻繁な嘔気、嘔吐、板状硬となる筋性防御等の腹膜刺激症状が著明で、臨床症状から消化管破裂の診断は比較的容易であり、またX線検査もしくはCTスキャンでの腹腔内遊離ガスによって確定診断ができ、後腹膜破裂とは状況が異なる。

十二指腸後腹膜破裂の診断については、X線写真上の所見では、腹腔内遊離ガスを欠くものの、(1)右腎または両腎を取り囲む気泡、気層、気嚢像、(2)一側または両側の腸腰筋に沿うガス像、(3)横隔膜下または骨盤部の後腹膜ガス像、(4)縦隔または頚部の気腫像、(5)右側腹部の皮下気腫像、(6)封入あるいは遊離の腹腔内ガス像等によって判断することとなり、またCTスキャンも後腹膜ガス等のガス像の描出に優れているとされる。もっとも、X線写真等からの診断は必ずしも容易でないことが指摘されており、確定診断は、ガストログラフィン投与による漏れの証明によらざるをえず、よって、疑心例については、速やかにガストログラフィンによる十二指腸造影を行うことが望ましいとされている。

(三)  そして、右(一)、(二)は、公刊された医学文献等により修得可能な知見であった。

2  本件における被告担当医らの過失について

前記二1ないし8、同四1で認定した事実によれば、被告担当医らは、腹部打撲の可能性のある患者に対しては、腹膜刺激症状が認められない場合であっても、十二指腸後腹膜破裂を含めた腹部臓器損傷の有無に十分注意し、腹部X線検査やCT検査を行って十二指腸後腹膜破裂による気腫像等が認められないかを確認し、疑心例についてはガストログラフィンによる十二指腸造影を行って確定診断し、早期に緊急手術を施行する義務があると解するのが相当であるところ、本件では、正人は、平成六年一月一九日交通事故により、頭部、背部を含む全身を強打して被告病院に救急搬送され、同月二〇日未明から、度々、腹部痛、呼吸促迫、口渇及び嘔気を訴え、同日午前七時五〇分ころ、黒茶色の液体を膿盆に二回に分けて嘔吐しており、同日撮影されたX線写真(検乙一の<2>、<3>)やCT画像(検乙二の<1>、<2>)には、肝臓下部と腎上極の間に後腹膜破裂を示す気腫像が描出されていたにもかかわらず、被告担当医らは、後腹膜破裂の発症に気付かなかったのみならず、その疑いを前提とした検索等も行わなかった過失により、十二指腸後腹膜破裂の早期発見に至らず、同月二一日夕方から食事を提供し続け、結局、同月二四日の高熱発生、同月二五日の白血球数の急速な増加といった容態の悪化ののち、同月二七日に十二指腸造影が施行されるまで、十二指腸後腹膜破裂を発見できず、右疾傷を悪化させ、死亡に至らしめたものと認められる。

この点、被告は、本件においては腹部臓器損傷を疑うべき所見や訴えがなく、X線写真等による十二指腸後腹膜破裂の診断は困難で、その気腫像を腸管ガスと診断したことに過失はないと主張するが、前記のとおり腹膜刺激症状が遅延し、臨床症状が不明確な十二指腸後腹膜破裂の症状の特異性を考える限り、たとえ腹部臓器損傷ととれる明確な臨床所見がなかったとしても、X線写真等によって十二指腸後腹膜破裂による無腫像の疑いのあるガス像が認められる限り、一方で単なる腸管ガスである可能性があっても、医師としては、これを十二指腸後腹膜穿孔による気腫像である可能性を念頭に置き、速やかにガストログラフィンによる十二指腸造影を施行して、十二指腸後腹膜損傷の発見に努める義務があるというべきである。しかるに、《証拠略》によれば、被告担当医らは、従来、同症例を経験したことがなく、かつ医学文献等による同症例の知見の修得も十分でなかったために、X線写真等に描出された前記気腫像によっても十二指腸後腹膜損傷を疑うことなく、看過したものであることが認められるのであり、過失を免れ得ない。

また被告は、十二指腸後腹膜破裂につき、一概に早期手術により良好な結果が得られるとは限らない旨主張するが、本件で、正人に右疾傷以外に致命的な副損傷があったことは本件証拠上認められず、かえって前記認定事実によれば、診断及び治療が遅れた上、右疾傷に気付かない被告担当医らの指示によって食事を摂取したことなどが加わって後腹膜膿瘍を発生、増悪させ、死への転帰をたどらせたものと認められ、したがって、本件では早期の診断治療により正人を救命し得た蓋然性が高いものと認められるから、被告担当医らの過失と正人の死亡との間に相当因果関係を肯認しうる。

なおまた、被告は、原告らが被告担当医らの勧める再ドレナージ手術を拒否し、正人を転移させたことを指摘しているが、これが死の転帰を左右したことを認めるに足る証拠はない。

3  以上によれば、被告は、正人に対する債務不履行責任及び原告らに対する不法行為責任を負わねばならない。

五  損害

1  正人の損害

(一)  入院雑費(済生会病院四日入院) 五二〇〇円

一日一三〇〇円×四日=五、二〇〇円

(二)  逸失利益 二九〇四万一〇一〇円

《証拠略》によれば、正人(昭和五一年九月二〇日生)は、本件事故当時、満一七歳(高校二年生)の健康な男子で、将来は原告謙藏の経営する佐々木歯科工業株式会社の後継者となることを志望していたものであり、一八歳から稼働年齢である六七歳までの四九年間就労しえたことが認められるが、現実にその志望どおりの労務に就労することが確実であったと認めるに足りる証拠はないから、原告ら主張の年収を正人が得られたことを前提に逸失利益を算定するのは相当でない。そこで、当時未就労であった正人について、本件事故がなければ、平成六年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・男子の一八歳ないし一九歳の平均年収である金二四四万五六〇〇円を前記稼働可能期間を通じて得られたものと認めるのが相当であるから、五〇パーセントの生活費控除をしたうえ、ホフマン式計算法によって年五分の中間利息を控除して死亡日である平成六年二月三日時点での正人の逸失利益の現価を計算すると、次の計算式のとおりとなる。

二、四四五、六〇〇円×〇・五×(二四・七〇一九-〇・九五二三)=二九、〇四一、〇一〇円

(三)  慰謝料 一五〇〇万円

正人に対する診療経過(特に平成六年一月二七日まで診断が遅延したこと)や、同人の本件事故当時の年齢、生活状況その他本件に顕れた一切の事情を勘案すると、正人が被った精神的損害に対する慰謝料(別途、父母である原告両名の固有の慰謝料を認容することを前提としたもの。)としては一五〇〇万円と認めるのが相当である。

(四)  損害填補(自賠責保険) 二一〇〇万円

(五)  損害額合計(損害填補後) 二三〇四万六二一〇円

(六)  原告謙藏と同孝子は、法定相続分(各二分の一)に従って、正人の右損害賠償請求権を相続した。

2  原告謙藏の損害

(一)  葬儀費用 一〇〇万円

(二)  慰謝料 四〇〇万円

原告謙藏と正人との関係、正人に対する診療経過その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、原告謙藏が被った精神的損害に対する慰謝料としては四〇〇万円と認めるのが相当である。

(三)  弁護士費用 一〇〇万円

(四)  損害額合計 一七五二万三一〇五円

原告謙藏の固有の損害に、正人の損害賠償請求権相続分の一一五二万三一〇五円を加算した額

3  原告孝子の損害

(一)  慰謝料 四〇〇万円

原告孝子と正人との関係、正人に対する診療経過その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、原告孝子が被った精神的損害に対する慰謝料としては四〇〇万円と認めるのが相当である。

(二)  弁護士費用 一〇〇万円

(三)  損害額合計 一六五二万三一〇五円

原告孝子固有の損害に、正人の損害賠償請求権相続分一一五二万三一〇五円を加算した額

4  なお、被告は、本件が正人の過失によって発生した交通事故を発端とすることを損害額の算定に当たって考慮すべき旨主張しているが、傷病の発生につき患者自身に責任がある場合にも、それが医師の診療行為の過誤の誘因となり、あるいは症状の悪化を招来したなどの事情がない限り、過失相殺の法理を適用することは相当でないところ、本件において被告主張の事情は右法理を適用すべき事情に当たらない。

六  以上によれば、原告の本訴請求は、原告謙藏に対し金一七五二万三一〇五円、原告孝子に対し金一六五二万三一〇五円及びこれらに対する正人死亡の日である平成六年二月三日から各支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、右限度で認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言について同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中澄夫 裁判官 今中秀雄 裁判官 島村路代)

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